物理法則に則り,生体や弾性体等のシミュレーションを行います.
自然界に存在する物体に、打撃を与えた際の応答は物体の物理性質や内部の構造により大きく変化する。 この現象を利用して、私達はスイカを選ぶ時には叩いて中身がつまっているかを音や感触で調べ、またコンクリート構造物の内部状態を打撃により検査する。本研究では、衝撃を加えた際の反力に物体の物理性質だけでなく、内部構造を反映させるため、物体内の応力分布を計算し、破壊による弾塑性体の構造変化と応力波の伝播を考慮した反力を計算するシステムの構築を行った。また、計算結果を記録、再生することで物体に衝撃を与えた際に生じる振動を提示した。
外科手術において広く用いられている機器として,体内に高周波電流を流すことによって組織の切開や凝固を行う電気メスがある.本研究では,手術シミュレーションへの応用を目的として,電気メスによる切開の物理法則モデルを構築する.手法としては,まず物体の電気メス接触部後における温度変化を考え,さらに温度変化に伴う物体内の水分の膨張率を考えることで切開領域を特定する. [Tanaka 2011]
近年の触覚提示装置の開発における戦略として,アドホックであるが単純な装置設計が注目されている.従って目的ごとに刺激条件の決定に試行錯誤せねばならず,コンピュータを用いた計画的な触覚提示装置の設計手法の確立が求められる.本研究では触覚提示装置の機能的要件から適切な刺激条件を決定するための触覚受容解析システムの構築を目的とする.特に電気刺激における触知覚のモデル化として,皮膚の物性を考慮した構造解析と軸索等価回路に基づいた神経活動の解析を可能にすることで触覚の定量化を行う.例として空間透明型触覚ディスプレイにおける電極サイズおよび電流量と感覚の関係を解析した.得られた結果に基づいて装置を制作し,動作を確認したところ解析結果と類似した特性が得られることが確認された.
本研究では,液体と固体が複雑に混合した対象である多孔質体のモデリング方法を提案し,実時間での力覚提示を実現する.バネ質点モデルを構成する個々の要素に,各要素が持つ空間の割合を示す間隙率と,液体の充填度合いを示す飽和率を付与することで多孔質体をモデル化する.GPGPUにより数十万個の要素からなるモデルの挙動を実時間で計算することが可能となった.
本研究では,ユーザ操作時に仮想物体の応力状態に基づいた破壊現象を実時間処理し,力覚提示可能とする手法を提案する.提案手法は,破壊によるトポロジ変化時の計算コストを削減する手法,ならびに,トポロジ変化を詳細に反映した反力を算出する手法で構成される.計算コスト削減は,き裂先端領域近傍の局所領域から構成されるローカルオブジェクトを定義し,ローカルオブジェクトについてのみ再構築計算を行うことで実現する.破壊進行に伴い,ローカルオブジェクトは,き裂先端近傍を囲むように更新される.また,反力算出のために,前処理段階で多様なトポロジとユーザ操作における反力を記録し,実時間処理中には記録した反力を補正する.提案手法により,仮想物体を引きちぎる操作が実時間で可能となった. [Arai 2009]