光,音等のエネルギを用いて,生体の様々な情報を計測する技術を開発しています.
跳躍や走行中に起きるアキレス腱断裂は,スポーツ選手の選手生命において致命的であり,医用画像による非侵襲的な兆候把握が期待されている.しかし従来の画像化手法は,特殊な機器を用いる必要があること,画像のコントラストが不十分であることなどの問題があり,断裂前の微細な損傷は描出できない.MRI計測において,腱や靭帯といった均一な線維配列をもつ計測対象の信号強度は,静磁場方向に対する角度に依存して変化することが知られている.本研究では,計測信号の角度依存性を利用して,アキレス腱組織の損傷部位を可視化する手法を提案する.提案手法は,静磁場に対する角度を変化させながら撮像した複数枚のMR画像から取得される信号強度データと信号強度の角度依存性の理想曲線より,線維配向性をあらわす数値を求め,画像化する. [Tokui 2011]
本研究では,足底より生体情報が取得可能な,マット型の生体計測システムを提案する.生体情報として,心血管系の指標となる心電図,光電容積脈波を選択した.計測システムは,マット,アナログ回路,AD変換器,PCで構成される.計測システムを構築し,被験者実験を行ったところ,心電図,光電容積脈波を足底より取得することに成功した.また,取得した心電図,脈波を用いて動脈硬化の指標として知られる脈波伝播速度を算出した.血圧との同時計測により解析を行ったところ,本システムを用いて算出した脈波伝播速度と血圧に相関を認めた.したがって,本システムを用いることで,日常的に不整脈だけでなく,動脈硬化や血圧を推定できる可能性が示唆された.
本研究では,近年オフィスでのデスクワークや,家庭でも使用時間が増えているPCの使用中に,無意識・無拘束で心電計測を行うことを目的とし,アームレスト型生体信号計測デバイスを作成する.アームレストに備えた電極からの信号を処理することにより,正確な心電計測とユーザの打鍵状態の検出が可能となった. [Tokui 2009]
計測技術の発展により,物体内部を非破壊で観察することが可能となった.中でもX線CTは高空間分解能を有する計測手法として,生体や機械材料の内部観察に利用されている.しかし,検出の際に被写体の全域をX線が通過する必要があり,空間分解能は計測対象の大きさに依存する.被写体より狭いビーム幅による再構成手法であるローカルトモグラフィが研究されており,関心領域境界での値を用いて,外部補正を行う手法等が提案されている.しかし,関心領域外部にX線吸収係数の大きな物体が存在する場合は,致命的なアーチファクトが発生する.本研究では,高空間分解能を有する局所的な投影データに対して,低空間分解能な被写体全域の投影データを用いて補正処理を施す手法を提案する.この手法により,被写体よりX線ビーム幅が非常に小さい場合でも,アーティファクトの少ない再構成画像を取得可能となる. [Suetake 2011]
近年,音声認識機器への入力や,雑音環境下でのコミュニケーションなどで,聞きたい音声だけを聞くという音声抽出のニーズが高まっている.本研究では,音源の位置に応じた音声抽出を行うことを目的とする.提案するシステムでは,ステレオカメラと2ch マイクロホンアレイを用いる.まず,ステレオカメラと2ch マイクロホンアレイでそれぞれ画像と音声を取得する.次に,ユーザが画像上で音源を指定し,指定された音源の位置をステレオ位置計測によって取得する.取得した音源位置に応じた差分型ビームフォーマによる雑音抑圧を行い,結果をスピーカから出力する.本システムでは,ユーザが音源を指定している間,指定した音源の発する音声を出力することができる. [Wakamatsu 2011]
AR内視鏡手術支援システムでは術中に撮影される実画像にあらかじめ生成しておいた臓器の三次元モデルを重ね合わせて表示することで手術の支援を行う.三次元モデルの重ね合わせを行うためには,内視鏡の位置姿勢求めることが重要がある.内視鏡の種類のひとつに斜視内視鏡が存在する.斜視内視鏡を用いる際,鏡筒の回転により内視鏡の光軸の向きが変化する.したがって内視鏡の視線方向を推定するためには,内視鏡の姿勢に加え鏡筒の回転角を求める必要がある.本研究では光学マーカと加速度センサを用いることでカメラヘッドに対する鏡筒の回転角の大きさを求めた.加速度センサは重力方向を検出する.鏡筒の回転角の大きさは重力方向の変化をもとに計算される.さらに,本システムでは内視鏡の動作判定を行ない,内視鏡の運動による加速度の影響を考慮した.
本研究では,体内において特徴的かつ計測が容易な直線形状を利用することで,術前のX線CT撮影により得られた体内の形態情報を,術中の画像に幾何学的な整合性高く重畳表示する手法を提案する.提案手法では直線であると仮定できる体内の大血管上の二点をポイントするだけでロバストな位置合わせが可能である.腎臓摘出手術において提案手法による支援を行い,臨床において本手法が適用可能であることが示された.
本研究では,呼吸音の客観的な解析を目的として,呼吸音中から副雑音区間のみを正確に検出し,呼吸音を疾病/正常に分類する手法を提案する.提案手法では,正常呼吸音から抽出した自己回帰パラメータに基づく逆フィルタを,入力呼吸音に対して適用し,入力呼吸音中から副雑音の可能性のある区間のみを抽出する.次に,時間周波数解析による特徴抽出を行うことにより,喘鳴などの連続性ラ音区間を検出する.連続性ラ音が検出された呼吸音を疾病と判定する.
本研究では,無拘束・非侵襲で呼気を計測する手法を提案する.呼気には水分が大量に含まれることと,水が近赤外帯に吸収を持つことに着目し,近赤外LEDとフォトダイオードの組を利用して計測を行う.